京都・祇園甲部の芸舞妓による伝統的な舞踊公演『都をどり』が、今春も京都芸術劇場春秋座にて開催されます。
そこで同劇場を運営する京都造形芸術大学では、この『都をどり』をテーマにした全国公募型の短歌賞を募集いたしました。
短い期間ではありましたが、92名、137首の応募がありました。皆さま、ありがとうございました。
3月8日(木)に京都造形芸術大学にて公開審査が行なわれ、受賞作品が決定いたしましたので、ここに発表いたします。
受賞作品は3月末より『都をどり』開催期間中(昨年は約45,000名が来場)に、ウェルカムアートとして、劇場までの回廊に展示します。

募集要項
テーマ :「都をどり」または「春」を題とした短歌(題そのものを短歌のなかに詠まなくても良いです)。
応募条件:各テーマにつき、1人1首まで。(どちらか1首のみでもOKです)
募集期間:2018年2月7日~3月4日(日)必着
副賞(大賞のみ):「都をどり」ペア観覧券2枚

〈都をどり〉
大賞
長時間露光のなかに咲きいづるだらりの帯の金糸の刺繍 (穂崎円)

次席
春はええなよーいやさーが始まるねんなんやろなあ嬉しなるねん(小山美保子)

佳作
まなざしは汀線に似てしとやかに袖口から四季をこぼして (駒田隼也)

〈受賞作選評〉
芸妓さんの踊り姿をシャッタースピードを抑えた長時間露光で捉えるという発想は非常に独創的で、下の句の「だらりの帯の金糸の刺繍」のズームアップも見事です。長時間露光で描き出される幻想的なイメージに圧倒されました。
辻本智哉(上終歌会・第二期部長)

〈春〉
大賞
肌のあるものたちがみな肌を脱ぐ水平線を揺らす春風 (井村拓哉)

次席
指先から春はじわじわやって来て筋を取りつつ豆ご飯炊く (大江美典)

佳作
さみどりのきみのスカート特別なかたちで去ってゆく春もある (中山顕)
またなにか思ひだせさう春の窓陽が射してゐるのにつめたくて (山内優花)

〈受賞作選評〉
「肌のあるものたちがみな肌を脱ぐ」から感じる心地よい潔さは、春を思う明るさを上手く表現しています。そこから下の句の情景描写への連なりも秀逸で、ありきたりな表現に頼らない作者の姿勢も含め、賞を贈りたいと思います。
山内優花(上終歌会・第一期部長)

講評
 小学生の微笑ましい歌から、70代以上のベテランの歌まで応募総数は137首であった。選考に当たったのは、上終歌会のメンバー9名に私を加えた10名。それぞれが持ち点、「都をどり」に関しては◎1つ、○4つ、「春」に関しては◎1つ、○5つを投票。◎を2点、○を1点とし、2点以上を集めた歌について集中的に討議した。

 題詠「都をどり」は芸舞妓に焦点を当てた歌、「よーいやさー」の掛け声、あるいは祇園の街並みを描写した歌などが多く見受けられたが、衣裳の帯に注目した一首が大賞に決まった。受賞作は結句に向けて、帯から金糸、そして刺繍へとカメラワークでズームしてゆくような視点の鮮やかさ、そしてその結句を予見させるような初句二句の「長時間露光」という撮影用語などに評価が集まった。また「都をどり」という題に相応しい三句目以降の絢爛、艶やかな雰囲気も、今回のウエルカムアートに最も適うという意見も多く出た。  

 次席となった一首の愛唱性の高さ、「よーいやさー」の掛け声と関西弁の相性のよさも高く評価され、カッティングシートで貼り出されるならこちらの方がインパクトが強い、という評も出た。ただ、第一回目ということもあり、今後の賞の方向性を強く規定してしまいかねない、という意見もあり惜しくも受賞とはならなかった。  

 題詠「春」に関しては、票がかなり分散し◎だけの歌が実に6首に及んだ。その中で受賞となった一首は、生きとし生けるものがみな身軽になっていく様子を「肌を脱ぐ」という抽象的かつ物理的にも手触りのある言葉で表現し、下の句の茫洋とした春らしさに繋げたところに高い評価が集まった。  

 佳作となった二首のような若い、あるいはひりひりとした感受性の歌に票が集まる一方で、次席となった一首のような生活に根ざした厨歌にも好意的な意見が多く寄せられた。ただ、筋を取るのは三度豆やサヤエンドウではないのか、「取りつつ」と「炊く」の同時性がおかしいのではないか、との意見もあった。  

 全体的に見ると、「都をどり」の方が題をこなしにくく、都をどりを正面から詠った歌がほとんど見受けられなかった。一首で表現するのは難しいとは思うが、なにかしらの切り口を見せてくれるような一首に今後、出合えたら嬉しいと思っている。  


永田淳(歌人)
 


主催
京都造形芸術大学 文芸表現学科 上終歌会
選考
上終歌会(学生短歌会)、永田淳(歌人、京都造形芸術大学非常勤講師)

永田淳
1973年滋賀県生まれ。中学2年生の頃より短歌を作り始め、同時に「塔」短歌会入会、現在は「塔」短歌会選者。大学卒業後、釣り雑誌社を経て、詩歌関係の出版社・青磁社を設立。歌集に『1/125秒』(第35回現代歌人集会賞)、『湖をさがす』(ふらんす堂・2冊とも)。著書に『評伝 河野裕子』(白水社)などがある。
上終歌会とは
2016年8月に発足した京都造形芸術大学学生短歌会。文芸表現学科で短歌を教える永田淳の指導を受けた学生や卒業生が中心となり、月1回の歌会を開催している。また、2017年には会誌『上終歌会01』を刊行し、近隣書店や文学フリマへの出品、京都カラスマ大学への出張講師、KBSラジオ出演など、その活動の幅を拡げている。

問い合わせ
京都造形芸術大学 文芸表現学科
担当:竹内、加藤
メール:office@creativewriting.jp
電話:075-791-8039(平日9:00~17:00のみ)